【日々の臨床で考える】歩行の目的とその着眼点について、特に脳卒中片麻痺患者さんにおいての話!
皆さんこんにちは!ゆーやです。
今回は臨床においてセラピストの方向けに「歩行」についてリハビリをする時に考えたいことについてお話できればと思います。
ちなみにこの内容は先日、私の職場で理学療法士スタッフ全員のミーティングで少し話した内容ですが、とても白熱した意見交換を繰り広げる事ができました。ありがたいです!
とりあえず身内話は置いといて、、、
皆さん(特に理学療法士の方)は歩行に対してどのように考え、どのように問題点を絞りリハビリ介入をされておられますでしょうか。
日々勉強し、常に思考を巡らせ評価、介入しておられる事かと思います。
ここでは私の意見を少し述べますね。
まず、私たち「ヒト」はなぜ二足歩行をするのでしょうか?
こちらは京都大学の松沢らの述べている事です。
”一人のおとなの男性が、民家の軒先から三つのパパイヤを盗った。両手と口にもって持ち運んでいる。今回の研究から結論できるのだが、資源が限られていて他者との競合がきついとき、チンパンジーは立って二足で歩くことが多いことが分かった。そのほうが一度にたくさん運べるからである”
引用
初期人類への最初の一歩:なぜわれわれの祖先は二足歩行になったのか、チンパンジー研究から解明されたこと — 京都大学
つまり、この内容によると限られた資源を独占するために1回に多く資源を持ち運ぼうとして四足ではなく、二足で歩くようになったのかもということである。
ここで考えるのが、物を持ち運ぶという目的のために、「手段」として歩行をしている点である。
これを現在の身近な人の生活に例えると、例えばトイレをするために「歩く」、友達や家族楽しく散歩するために「歩く」、田んぼを耕すために「歩く」、、、等いくつでも考えられますね!
ここで思うのがやはり、歩く(歩行)って結局「手段」なんですよね!
だから、僕たち理学療法士は歩行に着目して介入していく訳ですが、ここで忘れちゃいけないのが歩行って「手段」なんですね!!
だから歩行って楽にできないといけないと思うのです!
そして、マズローの欲求階層説を元にこんな図を作ってみました。
これは三角ピラミッドのうち、上にいくほど高次的な欲求として捉えています。
記載していますが病院においては命を守り、身体機能を改善して、元ある状態へ可能な限り戻すという点があり、理学療法士においても介入できるのは「所属と愛の欲求」くらいまでかなと思います。(病院においてです!)
これより高次な「承認欲求(自分を認め、他者に認められたい)」や、「自己実現欲求(自分らしく生きたい、創造的活動をしたい)」という部分は患者本人の環境や家族、地域、コミュニティ等多くの要素が必要になると思われます。
この欲求階層説を歩行に置き換えても同じで、病院内で関われる部分は図の通り下の3つくらいかなと思います。ここでさらに高次の欲求を満たすには歩行がより楽にできる越した事はないと思うのです。
「楽な歩行」を目指すために必要と思われる項目(私見)
↓↓↓↓↓↓↓↓
- 随意的ではなく、自動的である事! →運動学習の初期段階では随意で意識してもらう必要がありますが、目標としては脊髄レベルでの神経コントロール(セントラルパターンジェネレータ)を元にした意識をしない歩行であること。健康な僕らも散歩する時に、「次は右足を踵からついて、そのあと左足を挙げようかな?」とか考えないですよね!
- 連続的である事! →倒立振り子モデル(両脚支持期に重心が下がり、立脚中期に重心が上がる、この中で運動・位置エネルギーの変換が行われる事)が絶え間なく形成できているか?毎回止まっていたりしたら慣性も不十分だし非効率的ですね。
もちろんもっとたくさんありますが、
これを基に臨床で注意すべき点もあるかと思われます。
というシーン。
これは随意的プロセスが破綻している脳卒中片麻痺の方へ随意的要素を強要し、自動的プロセスの学習を阻害する要因になるかと思ってます!(もちろん、運動学習段階として必要な時期はあります!)
また、麻痺側片麻痺の方への理学療法として伝統的に麻痺側下肢に重心を載せる戦略をとる事が良くあります。
しかし、それって、筋出力や感覚、随意性が低下している麻痺側下肢に強要するのはとても大変だし、努力性となった結果、共同運動パターンを惹起しかねません。
そういった中で非麻痺側(健側)下肢に重きを置く、健側優位歩行は促通反復療法等で勧められています。 ※詳細については参考書や論文を参照ください。↓ ↓
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これは対象の能力によりけりで、一つの考えとして持って置きたいです。
また、最近脳卒中片麻痺の方の歩行時には装具を積極的に使用する事を勧められており、脳卒中治療ガイドライン2015でも下記の記載があります。
歩行障害に対するリハビリテーションの部分の内容です。
「脳卒中片麻痺で内反尖足がある患者に、歩行の改善のために短下肢装具を用いることが勧められる(グレードB)」
脳卒中治療ガイドラインに関しては一家に一冊、絶対に持っておいてください!笑
↓ ↓
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この装具も楽に歩行し、作業しやすくするために必要なものかと思います。
しかし、うちの職場の部長が良く言うのは「装具は治療用なのか?補装具としての役割なのか?装着する事での弊害はないか?効果判定を継続しなさい」という事です。
私も本当にこの通りであると思っていて、ガイドラインに載っているから「する!」ではダメで、その先に患者の状態や意見等踏まえ、検討すべきと思っています。
これは以前まとめたEBPに関する記事も内容が合致するかなと思います。見てみてくださいね。
部長が良く言われますが、「私たちは人を見なきゃいけない!」という事を忘れないようにしたいと思います。
内容が回り回ってもっと話したいところですが、
今回のまとめとして、まず対象者の歩行に着目する時に、その歩行の先に何があり、どのような生活があるのか?そしてそれを可能なかぎり実現するためには、「楽」に歩行できること。そしてそのため何を問題点として捉え、どのように介入するのか、常に考える必要があるのですね!
かくいう私も全然考えと勉強足りておりませんので日々精進します。
それでは本日はここまで。
最後までご覧頂きましてありがとうございました。
またぜひ見に来てくださいね!
参考文献:
阿部浩明ら. 脳卒中片麻痺者に対する歩行リハビリテーション. MEDICAL VIEW. 2016.
他
【元気でいるために】社会との繋がりや外出頻度が後の健康状態に繋がるかもという事【一般の方向け】
元気に過ごすために皆様はどのように工夫されていますか?
食事、運動、気分転換、、、
色々あるかと思います。
以前の記事で健康的な生活スタイルが健康寿命に影響するかもよ〜っていうお話をした事があります。
まだ見られていない方は是非見てみてくださいね♪
そして今回は、引きこもらずに、社会的に繋がりがある方が元気な状態を維持できるかもっていう内容の研究がありましたので紹介させてもらいます。
この研究はここ日本における、東京都健康長寿医療センターの藤原らが発表したものです。
内容として、65歳以上の地域在住高齢者2427名を対象として外出頻度、社会的孤立状態、移動性や抑うつ気分の自己評価について聴取し、4年間の経過を確認しました。
※社会的孤立状態=家庭以外の外部と週に1回以上連絡をとるかどうか。
結果として、4年後に同内容のものを再度聴取できた人は1575人であり、下記のグループに分けられた。
- 社会的孤立状態でなく、毎日家の外に出る → 897人 (グループ1)
- 社会的孤立状態ではないが、毎日は家の外に出ない → 311人 (グループ2)
- 社会的孤立状態 であるが毎日は家の外に出る → 224人 (グループ3)
- 社会的孤立状態であり、毎日は家の外には出ない → 143人 (グループ4)
そして男性はグループ3の人、女性はグループ2の人で4年後の機能低下がグループ1全体の人と比較して著明だったとのこと!(それぞれオッズ比は2.1、1.6)
また、グループ4の人に関してはグループ1の人と比較して4年間のうちの死亡率も高かかったとしています。
結論としては、男性は毎日家の外に出てても、家庭以外の人との関わりがなければ後に生活機能が低下しやすく、抑うつになりやすい可能性があります。
そして女性は家庭以外の人と関わりがあっても、家の外に出るのが毎日じゃなければ後に機能が低下しやすく、抑うつになりやすい可能性がある事を示唆しています!
別資料ですが、厚生労働省の「閉じこもり予防・支援マニュアル」 によると、身体の弱化や認知機能の低下、うつ状態などと閉じこもりが相互に関連していると記載があります。
https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1g.pdf
この点については以前記事にしたフレイルとも関係ありそうですね。
また、過去の研究では脚の能力やバランス能力は男性よりも女性の方が低下しやすいとされる報告もあり、女性が家へ閉じこもりになると男性よりも機能低下が著しくなるかもしれません。
そして、論文の考察でも記載されていますが、僕の考えとしてもやはり健康を維持するためには外出して、人との繋がりを持つ事が大事であると思っています。
そして男女それぞれ違う方法をとるのも一つの手かと。
女性は人との交流が得意な点もあるので、積極的にコミュニティに招待して参加してもらう。
男性は仕事でお金を稼ぐ事、やりがい等を重視するかなと思い、できる仕事をしてもらい同僚等とコミュニケーションを図ること。
これは医療従事者からの視点ではありますが、それ以外の方でも老若男女問わず、自分の健康のためにもぜひ積極的に外出して、社会的に交流を図る事をおすすめします。
今できる事をやっていきましょう!!
今回の内容はこれから僕が仕事の中で焦点を当てていきたい、コミュニティを通したリハビリテーションっていう観点からもとても参考になりました。
皆様の生活のためにも有益となる事を願っています!
それではまた書きます( ◠‿◠ )
参考文献:
Fujiwara Y, et al.Synergistic or independent impacts of low frequency of going outside the home and social isolation on functional decline: A 4-year prospective study of urban Japanese older adults .Geriatr Gerontol Int . 2016.
【論文紹介】パーキンソン病の方への運動による脳への影響【対象:セラピスト】
こんにちは。
所用により先日まで東京に行っておりましたが、
暖かいのは南国だけかと思いきや、その通り、東京でシャツ一枚で余裕こいてたらとても寒かったです^ - ^笑
話変わって、
臨床でパーキンソン病の方へ運動療法を提供する事があるのではないでしょうか??
その時はどこに着目しますか?筋緊張?姿勢反射?歩容?動作緩慢?
とても大事ですね。
パーキンソン病については以前、外部刺激の効果に関するメタ解析について紹介しました。
まだ見ておられない方は下の記事をご覧ください(^^)
で、私達の専門とする運動療法を実施する事でそもそもの疾患の原因となっている脳へアプローチできたら良いですよね。
そして、今回パーキンソン病の方が運動する事で脳機能にも良い影響があるよー、っていう研究があったので紹介します。
が、その前に簡単にパーキンソン病の病態について説明させてください。
【大脳基底核】
線条体(尾状核と被殻)、淡蒼球(内節と外節)、黒質(緻密部、網様部)、視床下核からなる。
【大脳皮質と基底核の連携】
大脳皮質 - 基底核ループといい、4種類に分類される。
- 運動系ループ:大脳皮質運動関連領域と主に被殻とを結ぶループ。運動機能に関与する。
- 前頭前野系ループ:前頭連動野と尾状核・被殻吻側部を結ぶループ。認知情報や記憶に関与する。
- 辺縁系ループ:辺縁皮質から側坐核を中心とする尾状核の腹側部へ投射するループ。黒質網様部の入力を受ける。情動、意欲に関与する。
- 眼球運動ループ:前頭眼野と尾状核とを結ぶループ。眼球運動を制御する。
【ドーパミンの役割】
中脳のドーパミン作動系ニューロンは以下の3つの部位に存在する。
ドーパミンレベルの変化により視床-大脳投射系や脳幹の興奮性を強く修飾する。
報酬が最大になる様な行動や思考の形成にドーパミンが関与する(強化学習)。
以上が簡単な説明で、パーキンソン病ではこのドーパミン作動系ニューロンの変性により放出量が減少して運動や思考に影響が生じるのです。
これらを踏まえて論文の紹介に移ります。
論文タイトルの紹介:
Exercise Increases Caudate Dopamine Release and Ventral Striatal Activation in Parkinson’s Disease
著者:
Matthew A. Sacheliら
雑誌:
Movement Disorders, Vol. 34, No. 12.
発行年:
2019年
内容:
【Abstract(要旨)】
〜背景〜
有酸素運動によるパーキンソン病患者のドーパミン放出、活動性への影響を確認すること。
〜方法〜
35人のパーキンソン病はランダムに介入群、対照群に割り付けられた。介入前後でfMRIにて報酬を見越した腹側線条体の活動を確認した。
また、rTMSを使用して背側線条体における内因性ドーパミンを測定した。
〜結果〜
介入群はカードゲームによる報酬75%(詳細は後述)の時に、fMRIにてドーパミン量増加が確認できた(p = 0.01)。
〜まとめ〜
有酸素運動は中脳辺縁系ドーパミン作動性を変化させ、腹側線条体の活動を変化、尾状核へのドーパミン放出を増加させる可能性がある。
【本文の内容】
〜イントロ〜
◎パーキンソン病患者が運動をする事は運動症状、非運動症状に対して良い効果が報告されている。
◎最近の報告では座りがちな者と比較して、習慣的に運動している者は腹側線条体へのドーパミン放出、尾状核の活動に違いがあり、無気力、気分が良好であったと報告されている。
◎しかし、横断研究が主であり縦断的に因果関係を明らかにしている報告はない。
◎よって本研究ではランダム化比較試験にて背側・腹側線条体反応に対する運動の効果を確認する事を目的とする。
〜方法〜
◎対象:45 - 80歳のパーキンソン病患者、Hoehn & Yahr分類 ステージI–III
◎割り付け:有酸素運動実施=20名(介入群)、ストレッチ実施群=15名(対照群)
◎評価:介入前と各介入後である3ヶ月後に測定。
持久性評価
- 最大酸素摂取量(VO2 max)をエアロバイクを使用して測定
脳機能評価
- functional magnetic resonance imaging (fMRI)
→ 金銭カードゲームで4つの異なる勝率(0%、50%、75%、100%)で報酬を調整。その際の腹側線条体を測定。
- PET スキャン
- rTMSを使用して、それにより誘発されるドーパミン量を測定
臨床評価 運動評価 → On,Offの両方で評価 非運動評価 → Onで評価
- MDS-UPDRS partⅢ(運動項目)
-
パーデューペグボード(手指の巧緻性を評価)
- 手指のタッピング
- Montreal Cognitive Assessment(MoCA)
- Trail Making A 、B テスト
- うつ、気分、アパシーの評価
◎介入:
介入群、対照群ともに週に3回を3ヶ月間(合計36回)
介入群の有酸素運動
→有酸素運動はエアロバイクで実施。全部で40-60分間。うち、5-10分はウォームアップで抵抗なし。30-50分のサイクリング運動、60-80%のVO2 maxで実施。
5-10分はクールダウンを実施。
※抵抗は患者の状態に合わせて決まりを定め強めていった。
対照群のストレッチング
→同じ時間、端座位での下肢ストレッチングを実施。
◎統計解析:
グループ間と時期間での評価結果 → 反復測定分散分析
fMRIによる脳機能解析 → 3-way反復測定分散分析
ドーパミン放出の程度 → 共分散分析
〜結果〜
◎ベースラインにおける群間での評価結果は有意差はなかった。
◎臨床評価の結果
VO2 maxは介入群で有意に向上した(P < 0.001)。他の臨床評価は介入前後で有意差は見られなかった。
◎fMRIの結果
金銭カードゲームで勝率75%に設定した際の両半球の腹側線条体が介入群において、介入後の活動が有意に向上した(P < 0.01)。
◎rTMSとPETによる結果
介入群において介入後の尾状核へのドーパミン放出量が対照群と比較して有意に向上した(P < 0.05)。
被殻においては有意差は見られなかったものの、介入群において介入後にドーパミン放出量が向上する傾向にあった。
〜考察〜
◎これまでの研究においても有酸素運動はパーキンソン病患者においてシナプス神経可塑性の促進に起因する可能性があり、ドーパミン作動性機能の改善、D2ドーパミン受容体発現の増加につながる事が示唆されている。
◎本研究がこの分野で前向きに研究した事が新規性である。
メカニズムは未だに不明であるが、有酸素運動によりドーパミン放出の増加とドーパミン受容体(尾状核とか)発現の増加が確認された。
◎臨床評価において、認知機能評価は介入前後で有意差は見られなかったが、これは評価の天井効果によるものが考えられる。
以上が本論文の紹介になります。
記事にまとめるだけでも大変でしたが、結局パーキンソン病の方が適度な強度で持続的な運動である有酸素運動を実施する事で、ドーパミンが増え、それを受け止める受容体の数も増えるよーって事ですね!
それで、ここでいうドーパミンは冒頭で説明した所の腹側被蓋野からのドーパミンや前頭前野系ループ、辺縁系ループに関するものかと思われます。
いわゆる、有酸素運動が認知機能や情動状態を司る脳機能に良い影響を与えるかもしれないとの事ですね。
臨床においてもパーキンソン病患者さんは運動機能だけではなく、二重課題が苦手になったり気分が落ち込んだりと非運動症状も生じています。
なので、有酸素運動を取り入れていく事で、身体機能だけでなく、認知機能や情動系に対しても効果があるかもとの事です。
そして、有酸素運動だけでなく、協調性を求めたりなど質的な部分に対しての運動療法も必要かと思います。それらについてまとめたレビュー論文もありますのでまた紹介させてもらいますね。
以上が今回の記事でした。最後までご覧いただきましてありがとうございます。
そして、これを見た方の臨床での考えや、対象者様のお役に立てれば幸いです!
そしてもし意見等ありましたらコメントいただければお互いの勉強にもなります!
それではまたお願いします。
参考文献:
◎Sachel A, et al. Exercise Increases Caudate Dopamine Release and Ventral Striatal Activation in Parkinson’s Disease.Movement Disorders, 2019 ; Vol. 34, No. 12.
◎高草木 薫.大脳基底核の機能;パーキンソン病との関連において.日本生理学雑誌. 2003;65:113−129.
【健康習慣】健康的な生活スタイルは健康寿命にどの様に影響するか?【論文紹介】
本日も記事をご覧いただきましてありがとうございます!!
新年始まったばかりかと思いきや、もう1月も後半ですね。
びっくりします。
本日は、一般の方で健康に過ごしたい方や、セラピストも参考になる様な研究内容を紹介いたします。
まず、皆さんはお酒を良く飲み、タバコも吸われますか?
何事もですが、やはりほどほどが良いのは言うまでもありませんね、、。
今回の論文は今年2020年に入ってから発表されたもので、ハーバード大学のヤンピング・リ らの研究です。
論文タイトルの紹介:
Healthy lifestyle and life expectancy free of cancer, cardiovascular disease, and type 2 diabetes: prospective cohort study.
著者:
Yanping Liら
雑誌:
BMJ (2020)
内容として20〜30年間の間に行われた医療従事者に対する健康調査を元に約11万人を対象としているものです。
この対象者について健康的なライフスタイルである、
- 喫煙をしていないこと。
- BMIが18.5〜24.9であること。
- 中等度から激しい運動(3METs以上 ※1)が1日で合計30分以上実施していること。
- 中程度のアルコール摂取量(女:5〜15g/日、男:5〜30g)
- 代替健康食指数※2 が40%以上であること。
※1 3METsは普通の速さで歩く程度の負荷量。
※2 食事の質を評価するもの。
の5つのうち、いくつが該当するかアンケート調査しています。
そして、糖尿病や心血管疾患、ガンを発病していない健康寿命を結果の項目として挙げています。
その結果、50歳の時点からの女性の健康寿命は、
上記の健康的なライフスタイルのうち4〜5つ該当した者は平均34.4年だったのに対して、
健康的なライフスタイルを有していなかった者は平均23.7年というものでした。
そして、50歳時点で喫煙している男性(1日15本以上)、もしくは肥満の男女(BMI30以上)の者の平均健康寿命がもっとも短かったという結果が出ています。
まとめると、喫煙、飲酒、肥満、運動、食事に注意して生活した人が健康的に長生きする可能性があるかもしれないっていうことです。
一般的に言われている健康のための事項の重要性を根拠を持って明らかにした、重要なビッグデータかと思います。
健康寿命を長くする事に関しては、自分にとっても家族にとっても幸せかと思います。
そして、糖尿病などの病気にかかった時に国からサポートしてもらえる分が我々の税金等からなりたつ社会保障費ですよね。
健康の人が多ければ、それは国にとっても良いことかと思いますし、万が一病気になった場合でもサポートがしやすくなります。
ここで映画「ターミネーター」で良く使われる言葉を書きます。
"The whole thing goes: The future's not set. There's no fate but what we make for ourselves."
(すべての物事の未来は、定められてなどいない。運命などなく、我々自身が切り開くんだ)
この言葉の様に自分の健康や周りの幸せ、国の未来のためにできることをやって未来を切り開きましょう!!!
それでは、I'll be back!!!
参考文献:
Yanping Li, et al.
Healthy lifestyle and life expectancy free of cancer, cardiovascular disease, and type 2 diabetes: prospective cohort study. BMJ. 2020:1-20
セラピストが研究はする必要があるか。論文を読む必要性は!?【対象:セラピスト】
こんにちは。ゆーやです。
本日もご覧いただきましてありがとうございます。
セラピストの皆様は日々の臨床を通してどの様に評価項目を考えて解釈し、治療プログラムを立案しているでしょうか?
ま臨床での疑問点や改善すべき点など、日々の仕事の中でたくさんあるかと思います。
早速ですが、私自身の考えはその様に治療プログラムを立案したり、評価の解釈の際には論文を読み、そういった中で疑問があれば研究に発展させていく必要があると思っています。
今回の記事では論文を読む、研究をする目的について僭越ではありますが私なりの考えを書きたいと思います。
目次
①自己研鑽は必要か?
私自身は空いた時間で論文を読む様にしており、それこそ大学院に通っておりますが、そこで学んだ事を生かして研究もやっていきたいと考えております。(まだまだ経験も少なく、未熟すぎますが、、、)
それは自己研鑽なのか...!?
と聞かれたらその感覚ではやっていないかもしれません。
今やっている理学療法士の仕事はせっかく自分が選んだ職業ですし、毎日の臨床に味を持たせるために行なっている事かもしれません。それで対象の方にも利益が出ればもちろん嬉しいですし、良い事かと思います。
何も考えずに仕事するより楽しんじゃないか?っていう様に一種の趣味の様な感覚かもしれません。
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上記の文献は首都大学東京の網本和先生、埼玉医科大学の高倉保幸先生が執筆されておりますが、この中の内容を少し紹介します。
以下、部分略
「なぜ自己研鑽が必要なのかは臨床研究の必要性と合致してきます。
目の前にいる対象者を理解して最適な治療を提供するためには、臨床研究によって日々の臨床場面に起こるさまざまな疑問(clinical question:CQ)に応えていくことが重要です。」
②私の考える論文を読む目的
CQに関しては臨床での仕事やセラピストをしている以上、常に絶えないと思います。
ここでいうCQについては日々絶えないでしょう。
CQをどの様に解決していくか。
その時には経験則だったり、基本的な理論、その職場の方針や上司の助言等で判断するかと思います。
しかし、従来当たり前の様に実施してきた実践内容の中には安全性や効果が不確実であったり、バイアス(偏り)の影響を受けている可能性があるわけです。
なので、論文を読み臨床研究の結果を確認して臨床に応用する必要があるかと思っています。
③Evidence-based Practiceについて
この様に先行研究の結果等を参考にしながら臨床を展開していく事の考え方にEvidence-based Practice(EBP)というものがあります。
信州大学の木村貞治先生の勉強会であった内容ですが、
「患者の臨床的疑問点に対して、自身の知識、技能、経験則だけでなく、質の高い臨床研究の結果 “も” 参照した上で、基本方針を説明し、患者の意向や価値観との折り合いを確認しながら、できるだけ安全で効果的な医療を提供するという医療専門職者(プロフェッション)としての熱意と責任感」
と言われておりました。
EBPとは質の高い臨床研究結果や医療者の臨床能力、患者さんや家族の価値観を加味した上で臨床判断していく事です。
そして、その中でもやはり論文を読み、先行研究の結果を確認した上でも疑問はたくさんあります。
この疑問はまだ漠然としているCQの段階ではありますが、それを解決する術として研究を実施するという手段があるのです。
④研究を実施する目的
CQはまだ大まかな疑問かと思うのですが、先行研究を調べていったりする事で、その疑問だと思っているテーマについて
- どの程度まで現時点で解明が進んでいるのか。
- どこから先の何がまだ明らかにされていないのか。
を明らかにしていきます。これで明らかになった研究に繋がる疑問をResearch question(RQ)と言います。
このRQを整理する視点として
- 患者の困っている事に耳を傾ける
- 自分自身が医療現場で困っている事に耳を傾ける
- 日常行なっている医療行為を洗いなおす
- わかっていない事は何か?を考える
ことが重要であると言われています。
研究を実施していく事で、対象者を理解して、最適な治療を提供する、高い臨床力を身につけ、日々の臨床疑問に応えていく事だと思います。
以上は私のこれまでの臨床での仕事(6年足らずですが、)や大学院で学んでいる中で考えていることでした!
最近はビジネス等についての自己啓発本等読むことがありますが、
この様に医療の現場で研究をして学ぶプロセスはビジネスにも生かされるのではないかと思っています。駆け出しなので、それをこれから確認してみたいと思います。
このブログではセラピストの方にはEBPや臨床研究を展開するために有益な情報を提供できたら幸いかと思います。
そして、セラピスト以外の一般の方には先行研究等を元に、健康のための正しいと思われる知識を提供できる、橋渡し的な役割を担えたらなと考えています。
以上が今回の記事でした。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。
参考文献:
網本和,高倉保幸.臨床の“疑問"を“研究"に変える 臨床研究 first stage (理学療法NAVI). 医学書院. 2016.
【健康のために考える③】高齢者の問題、身体的フレイルの予防と改善【一般の方もセラピストも】
こんにちは。ゆーやです。
いつもブログをご覧頂きましてありがとうございます。
昨日は大学のセンター試験だったのですね!受験された皆さんお疲れ様でした(^-^)
前回の記事では身体的フレイルを含めた、フレイルの分類について記載しました!
そして今回は身体的フレイルをどの様に予防できるか、改善していくのかについてまとめたいと思います。
身体的フレイルをチェックするための項目についても以前の記事をご覧ください。
身体的フレイルへの適切な対応による予防効果
この身体的フレイルですが、これまでの研究によると悪化の一途をたどるわけではなく、適切に対応する事で身体機能や生活能力の向上、フレイルからの脱却を図る事ができると言われています。
適切な対応とは、身体的フレイルの背景にある要素
に焦点を当てて行動をすれば良いとされています。
実際にオーストラリア、シドニー大学のカメロンらが2003年に発表した報告では、フレイルと判断された216名に対して上記のフレイルの要素を標的に在宅での介入を12ヶ月実施しています。その結果、歩行や筋力の向上、身体活動量の増大などを実施した介入グループにおいて、通常のサービスのみを実施した対照グループと比較して、有意な改善が認められています2)。
「でも、そんなのどうしたらいいの???」
「専門的な知識がない自分たちでできるものなの!??」
と疑問の声が聞こえてきた気がしましたが、、、
その通り、この研究での介入は理学療法士等が関与して実施されたものです。
でも、筋力低下に対する筋力トレーニング(筋トレ)だったり、体重減少に対する食事管理は当該の方、もしくはその周りの身近な方が関わる事でできない事はないかもしれません。
今回は筋トレに焦点を当てて簡単に説明できればと思います。
頑張りすぎなくてもいい?高齢の方でもできる筋トレの方法とその効果
筋トレと言ったら皆さんはどの様なものを想像するでしょうか。
↑こんな感じでおっっっもい重りを持ち上げたりしてすごくキツイ事をしないといけない、そんなのできない、、、。
と思いますよね。
確かに、筋トレは一般的に重量を重くしてしないと効果はないのでは?と認識されていると思います。
過去にその様な研究もされており、アメリカのタフツ大学のフィアタロンらが1990年に報告した内容は、虚弱高齢者でも最大筋力の80%の高負荷で筋トレをする事で筋力向上、歩きの速さが向上したと方向しています3)。
しかし、高負荷での運動はキツいために続かない、精神的負担も大きいだけでなく、疼痛が生じる、心臓への負荷が大きいなどのリスクも伴います。
でもここ最近は、高齢者は低負荷でもいいよー、効果あるよーという内容の研究がされております。
2016年にオーストリアのインスブルック大学のクスパオらが2016年に方向したメタ解析(※質の高い研究を集め、統合して結果を解析したもの。エビデンスが高いとされる。)によると、
最大筋力の30%といった低負荷の運動であっても、高負荷のものには劣るけど筋力向上効果はあると結論づけられました。
そしてそのために大事なのは負荷だけでなく、セット数、反復回数をかけた量を考慮する必要であると言ってます4)。
アスリートや成人が対象かもしれませんが、筋トレについてとても詳しくまとめられている本「科学的に正しい筋トレ 最強の教科書」著者の庵野拓将(あんの たくまさ)先生のブログ「リハビリmemo」に記載されている内容が高齢者の方にも適応できるかもと考えています。
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↑ これはどちらかというと若い人向けかなと思いますが、
理学療法士の人や、筋トレ好きな人はぜひ見てみてください!
僕もこれで勉強しながら筋トレしています!またその経過を報告させてください!笑
話が逸れましたが、
効果的なトレーニングのために推奨される水準は下記の通りです。
- 期間:50〜53週間(約1年程度)続けること
- セット数:2〜3セット
- セット間休憩:60〜120秒
- 頻度:週に2回(個別の筋肉で考慮するといいです)
- 1セットでの回数:7〜9回の反復
- 動作1回の時間:6秒(ゆっくりすること)
これを意識しながら、これまで運動をされていた方は応用して、されていなかった方は始めてみてもいいかもしれません。
これらの研究はどちらかというと、健常高齢者を対象としているので、信頼性的にはフレイルの予防という形で捉える方がいいかもです。
あと、家族にフレイル疑いの方がいる時には、ぜひ一緒にやってみてくださいね。
体調不良やバランスの取れた食事に注意して実施する様にしてください。
実際の運動項目等については機会がありましたら記事に書きますね。
それでは今回はここまでにします。
最後までご覧頂きましてありがとうございました。
これからも有益な情報を発信して皆様の健康のために寄与できればと思っています。
よかったら、ブクマ、読者登録お願いします!!(^-^)
なお、今回の記事は下記の本を参考にしながら書いてます。
リハビリに関わる方などはぜひみてみてくださいね。とても勉強になりますよ。
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参考文献:
(1)牧迫飛雄馬. 老年健康科学 運動促進・知的活動・社会参加のススメ. HUMAN PRESS. 2019.
(2)Cameron ID, et al. A multifactorial interdisciplinary intervention reduces frailty in older people: randomized trial.BMC Medicine. 2013 ;11:3-10.
(3)Fiatarone MA, et al.High-intensity strength training in nonagenarians. Effects on skeletal muscle.JAMA.1990 ;Jun 13:263(22):3029-34.
(4)Cspo R, et al.Effects of resistance training with moderate vs heavy loads on muscle mass and strength in the elderly: A meta-analysis.Scand J Med Sci Sports 2016: 26: 995–1006.
【健康のために考える②】フレイルの3つの種類とその特徴について【一般の方もセラピストも】
みなさんこんばんは。
本日は【健康のために考える】企画!フレイル編第2弾!! ←いつの間に企画化?w
前回はフレイルの主な概要についての記事でした。
もしもまだ見られてない方はどうぞご覧ください!
そして今回ですが、フレイルについて少し広く書きます。
簡単におさらいですが、フレイルとは日本語で「虚弱」という意味であり、高齢期においてストレスに対して弱くなる事を言います。
このフレイルには3つの種類があります。
そして、フレイルはまだ自立した生活を維持できる状態を指し、介護が必要な障害状態とは区別して捉えられています。
一つずつ簡単に説明していきます。
①身体的フレイル
身体的フレイルは前回の記事で紹介したものの事と言ってもいいでしょう。
加齢による筋肉量の減少や食欲不振による低栄養などが相互に影響し合っています。
②認知的フレイル
加齢により記憶力等の認知機能は低下していくのは知られていますね!
これが「年相応」であれば良いですが、f相応を超えた低下は将来における認知症の発症リスク増大と関連があると言われています。
認定的フレイルに関しては定義や判定のための基準が十分定められていないようです。
しかし、2013年より身体的フレイルと認知障害を併存した状態としています。
近年ではリスクの高い者を早期に発見するために歩行速度の低下、筋力低下に該当する場合の2つの項目の該当で良いとしています。(本来は3つ、詳細は前回の記事を見てみてください!)
③社会的フレイル
社会との交流などは「社会参加」と言われ、生活する上で重要な項目となっています!
日本における地域の高齢者1365名を対象に調べた報告によると、8項目の活動のうち、1つでも参加している者は83.6%であったとしています!
特に、「習い事」「地域の行事・祭り」「自治会活動」の実施項目が高かったようです。
社会的フレイルはこの社会参加が減少し引きこもりがちになる事といえます。
④高齢者の生活の加齢変化について
日常での生活を下記のように分ける事ができます。
- 歩く、入浴、トイレでの動作、顔を洗う = 基本的な日常生活
- 家事動作、買い物、金銭管理 = 手段的な日常生活
- 余暇活動、社会との交流 = 広義の日常生活
そして、上記の項目で全て自立していた814名の高齢者を8年間見た時に、社会的役割の低下率がもっとも高いという結果が出ていました2)。
つまり、社会的な役割が先行して喪失して、徐々に基本動作(歩くなど)が低下してくるようです。
まとめとして、フレイルには3つの要素があり、
健康を保つためにはこれらをいかに保持していくか考える必要があります。
そして、運動等の基本的な事は大事で、社会的にもつながりを持っておく事、これがもっとも重要なようです。
そのためにはもちろん国を挙げての取り組みも必要です。
また、もしこの様な事を頭に入れておけば個人個人も人とのつながり、コミュニティを大事にして家に引きこもらない事!当たり前に思える事ですが、これが大事の様です。
今回の記事は以上です!
最後まで見て頂きありがとうございました。
これからも、セラピストや健康に興味があり、ずっと元気でいたい方に向けて有益な情報を発信できればと考えております。
なので、ぜひブックマーク追加、読者追加等よろしくお願いします。
そして、まだ駆け出しで拙い文章ではありますので意見等ありましたらコメントお願いします。
それではまた次回!!
参考文献:
(1)牧迫飛雄馬. 老年健康科学 運動促進・知的活動・社会参加のススメ. HUMAN PRESS. 2019.
(2)古谷野亘ら.地域老人における活動能力の測定--老研式活動能力指標の開発.日公衛誌. 1986;34:109-114.